★オオスズメバチの警報フェロモン

警報フェロモンとは、巣に敵が来た事を伝える 低分子の化合物で、毒液中に含まれ、空気中に散布されます。 非常に揮発性が高く、素早く広範囲に効果が発揮されます。

在学中、教授をはじめ多くの方々に助けられ、 オオスズメバチの 警報フェロモンの発見に成功しましたので、 ここで簡単に紹介します。


★警報フェロモンの発見から

スズメバチを含む多くの昆虫達は、『匂い』の情報を頼りに行動します。 これを『フェロモン』と言うものですが、この『フェロモン』を 利用し、互いに情報交換しています。

スズメバチなど社会性の昆虫達は、敵の接近を伝える為 『警報フェロモン』を使用しています。 これは毒液中に含まれ、揮発性が高く、分子量の低い化学物質がよく 利用されています。

実は人が合成・販売しいている商品中にも、 この『警報フェロモン』として使われている 化合物が存在する可能性があります。

オオスズメバチの例ですが、 私が大学時代研究させていただき、 『警報フェロモン』を発見したことでわかったのですが、 アルコールの一種が『警報フェロモン』として 使われていたんです。

実際には、『警報フェロモン』は単一の化学物質だけとは 言い切れません。先ほどのアルコールの他に、 オオスズメバチの毒液中より見つかった、 別のアルコールとエステルと一緒だとより反応が強まります。


オオスズメバチの毒液の分析結果

これは私がオオスズメバチの 毒液中の揮発性物質を分析した結果です。 ちょっと見ずらいと思いますが、3本の縦の線(ピーク)が見えると思います。

1つ目のピーク
2-Pentanol

2つ目のピーク
3-Methyl-1-butanol

3つ目のピ-ク
1-Methylbutyl 3-methylbutanoate


生物検定を行った結果、1番目の2-Pentanolに強い反応がありましたが、 2、3番目の3-Methyl-1-butanolと1-Methylbutyl 3-methylbutanoateを これに加えると、よりスズメバチの反応が強くなりました。

オオスズメバチの巣が刺激されると、 働き蜂は警報フェロモンを毒液と一緒に出します。

一つの化合物のみを選んで放出するとは考えにくく、 複数の化学物質が混合していると反応が強い、 というのはとても自然なことだと考えられます。

教授や先輩をはじめ、多くの方々にサポートしていただき、 平成14年にオオスズメバチの警報フェロモンを発見することが 出来ましたので平成15年3月には、日本応用昆虫学会にて 『日本産スズメバチ属の警報フェロモンに関する研究』をテーマに発表しました。

日本応用動物昆虫学会大会講演要旨
『日本産スズメバチ属の警報フェロモンに関する研究』(PCサイト)

数ヵ月後には、お世話になった教授により科学雑誌Natureに登載されました。

科学雑誌Nature(Vol. 424, No.6949, pp. 637-638, 7 August)(PCサイト)

Nature日本語ページはこちら(PCサイト)

『警報フェロモン』と同じものが、香水や整髪料などに 含まれていたとしたらどうなるのか。

現在、多くの商品が販売されており、どの商品に 何が含まれているのかわかりません。

もし『警報フェロモン』と同じ化合物が含まれている商品を利用した人が、 スズメバチの巣の近くを通りかかった場合どうなるのか。実際に実験はしていませんが、 おそらく一部のスズメバチはこれに反応する可能性があります。

そのため、野山を歩く際にはそういった商品は 利用しない方が良いと考えています。

もちろん全ての商品に含まれているとは言えませんが、 逆を言えばどれが危険かわからないということです。

スズメバチの巣に近づかなければ危険もありませんが、 十分注意しいただきたいと思います。



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